「幽幻道士」
「幽幻道士」の作品情報
原題: 殭屍小子
製作年:1985年
製作国:台湾
監督:チャオ・ツォンシン
製作:チン・チュンリャン、ツァイ・ヤンミン
出演者:リュウ・ツーイー(シャドウ・リュウ)、リュウ・ツーハン、チェン・ツーチャン、チャン・タイスン、ホァン・グオシュー、ホン・イーユェン、チャン・キント―、ホァン・ツンイ、パン・サン
上映時間:94分
「幽幻道士」のあらすじ
大道芸人の親方に連れられて旅回りをしている孤児のチビクロ、スイカ頭、デッパ、チビトラは、森の中でキョンシー隊に遭遇し、いたずら心からキョンシーのお札をはがしてしまう。
するとキョンシーは暴れはじめ、親方が影を踏まれてしまう。
数日後、金おじいさんとテンテンの住む街へとやって来た親方とチビクロたち。
チビクロたちはテンテンと出会い、友達になるために気を惹こうとするが、まるで相手にされない。
親方はキョンシーに影を踏まれた一件から不運な出来事が続くようになり、ついには児童虐待で警察に逮捕されてしまう。
行き場を失ったチビクロたちは道士の金おじいさんの元に引き取られ、彼の孫娘テンテンと再会することとなった。
その夜、投獄された親方の前に影を踏んだあのキョンシーが再び現れてしまい・・・。
「幽幻道士」の感想
この台湾映画『幽幻道士』は、1980年代にキョンシーブームを巻き起こした、キョンシーファンには説明不要の人気作ですね!
香港映画『霊幻道士』を元にして生まれた亜流キョンシー作品の一つなのですが、日本では本家を上回る人気があったと思います。
ヒロインであるテンテンのかわいさと子供たちが中心となったストーリーである点が、日本の子供たちに受けたのかもしれません。
続編も日本では次々とヒットし、キョンシー関連の商品(おもちゃ・本・お菓子・ゲームなど)がたくさん販売され、当時の小学生でキョンシーを知らない子を見つけるなんて無理ではないかというぐらいの社会現象になっていました。
ブームを起こすほどの人気となった大きな要因の一つは、なんといってもキャスティングが良かったことでしょう。
ダントツの人気を誇るテンテンは、リュウ・ツーイー(シャドウ・リュウ)
テンテンの祖父で法術の使い手である金おじいさんは、チャン・キント―
小柄で強気な性格のチビクロは、チェン・ツーチャン
三枚目で食いしん坊のスイカ頭は、リュウ・ツーハン
(リュウ・ツーイーの兄です)
出っ歯で背の高いデッパは、ホァン・グオシュー
細身で身体能力の高いチビトラは、チャン・タイスン
見た目のインパクトがあるデブ隊長は、パン・サン
かわいくて不思議な存在のベビーキョンシーは、ホン・イーユェン
チビクロたちを養いながら旅回りをしている親方は、ホァン・ツンイ
亜流作品でありながらも、うまく考えられたキャラクター設定にキャスティング・独特の技である法術の数々・キョンシーの特徴や設定がしっかりとしているなど、よくできた作品です。
一つだけ裏話をすると、もともとテンテン役はリュウ・ツーイーではなく、別の女の子に決まっていたのです。
ところが、リュウ・ツーハンが『幽幻道士』のオーディションに参加した時にたまたまついてきた妹のリュウ・ツーイーを見た監督が、「今決まっているヒロイン役の子を降ろして、この子を使う!」と言い出したんです。
それがきっかけでリュウ・ツーイーはテンテンを演じることになり、一躍子供たちのアイドルになったのです。
話は変わりますが、僕が感じている『霊幻道士』と『幽幻道士』の大きな違いは以下の通りです。
「霊幻道士」はホラー度が低くて、コメディー度が高い。
「幽幻道士」の方がホラー度が高くて、コメディー度が低い。
「霊幻道士」は大人が活躍して、「幽幻道士」は子供たちが活躍する。
「霊幻道士」よりも「幽幻道士」の方がシリアスな内容である。
本作のストーリーについて触れると、親方たちがキョンシー隊と出会ってから次々と悪いことが起きるのですが、はっきり言って一番悪いのはチビクロ・スイカ頭・デッパ・チビトラの4人です。
親方がキョンシーに影を踏まれてしまったのも、留置場で親方がキョンシーに噛まれてしまったのも、もとはと言えばこの4人のイタズラが原因なんです。
親代わりである親方を失ってしまったチビクロたちは一見かわいそうなんですが、自分たちがこんな事態を引き起こしたことに気づいてないんですよね。
まあ、子供だから仕方ないと言えば仕方ないのですが・・・。
むしろ一番かわいそうなのは親方です。
子供たちに厳しくて乱暴な面もありますが、子供たちを守ろうとしたり、自分を逮捕したデブ隊長をキョンシーから救ったり、基本的にいい人なんですよね。
それなのに、劇場主から契約を反故にされたり、キョンシーに噛まれたりと散々な目にあいます。
ちなみに親方がキョンシーに噛まれるシーンは、
「幽幻道士」シリーズの中で最も怖いシーンと言えるのではないでしょうか。
このシーンを子供が一人で観るのはキツイと思います。
キョンシーが親方に止めを刺しに来る瞬間は、見ているこっちが「もうやめてくれー!」と言いたくなります。
親方役のホァン・ツンイは、アクションもすごいし、演技もうまい役者さんですね。
この方は「幽幻道士」シリーズのほとんどの作品に出演しています。
そして、リュウ・ツーイー(シャドウ・リュウ)演じるテンテンに負けず劣らずカワイイのが、ホン・イーユェン演じるベビーキョンシーです。
ベビーキョンシーが出てくると、怖いキョンシーがいてもホッコリしてしまいますね。
このベビーキョンシーと言い、特殊霊魂と言い、細かい小道具や法術などいろんなアイデアが盛り込まれていて、亜流キョンシー作品とは言え完成度が高いです。
本作はキョンシー映画を観たことがない人でも、香港のアクション映画やホラー映画の好きな人であれば、楽しめる作品ですよ。
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